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<ジカウィルス感染症>

近年蚊が媒介する感染症が南米やアフリカなどで流行し、日本にも入ってくることも予想されます。

感染症法では日本脳炎、ウェストナイル熱、黄熱、リフトバレー熱、西部ウマ脳炎、東部ウマ脳炎、ベネズエラウマ脳炎、マラリア、野兎病なども蚊媒介感染症に含まれますが、2015年のデング熱、チクングニア熱に加え、今年ジカウィルス感染症を含めた蚊媒介感染症の診療ガイドラインが更新されました。

デング熱、チクングニア熱、ジカウィルス感染症はともに発熱と全身の発疹を特徴とし、同じ種類の蚊(ヤブ蚊属)によって媒介される感染症です。いずれもアフリカが起源ですが、近年ではアジア、中南米を中心に流行しています。日本では輸入感染症として見られていましたが、デング熱に関しては2014年に国内感染例が報告されました。

日本における媒介蚊はヒトスジシマカで、主に5月中旬から10月下旬に活動しています。冬季には成虫は存在しません。ヒトスジシマカは本州(秋田県及び岩手県以南)から四国、九州、沖縄、小笠原諸島まで広く分布しています。

デング熱については昨年7月13日付のひとりごとで書かせて頂きましたので、今回はジカウィルス感染症について書かせて頂きます。

ジカウィルスが感染した場合、約20%の患者さんが2~13日の潜伏期間を経て、皮疹、軽度の発熱などがみられますが、多くは自然治癒します。2015年以降の中南米の流行時にギラン・バレー症候群(神経の病気)の増加が報告されました。

ジカウィルス感染症で懸念されているのが、母体から胎児への垂直感染により小頭症などの先天性異常をきたすことです。2015年のブラジルでの流行開始後、小頭症児の出生数が急増し、小頭症による死亡胎児・新生児の髄液・脳組織などからジカウィルスが検出されていることから関連性が強く示唆されています。現時点でジカウィルス感染症の診断のための製造販売承認された検査法はなく、衛生検査所、国立感染症研究所などの専門機関での検査が必須です。

ジカウィルス感染症に対する有効な抗ウィルス薬はないので、飲水の励行、症状に応じた対症療法をおこなうしかありません。ギラン・バレー症候群などの特殊な病態がみられた場合には適切なマネジメントが可能な医療機関を受診していただきます。

妊娠中の女性がジカウィルスに感染した可能性がある場合には専門医療機関を受診、検査をしていただきます。

これから蚊の発生する季節となりますが、今後蚊媒介感染症が増える可能性がありあます。虫よけスプレーなどを適宜使用し、また、蚊の発生源となるような雨水のたまった容器などを放置しないなど、身の回りの環境対策を地域全体でおこなうように気を付けたいと思います。