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<足が冷たい>

足の冷感には、実際に冷えている場合と、実際には冷えていないのに冷えを感じている場合があります。前者は血行障害や熱産生障害、後者は神経障害で起こります。

冷たいという感じ方は個人差がありますので、触って冷たいか、冷たくないかだけでは判断できません。可能であれば、サーモグラフィーで客観的に調べることをお勧めします。皮膚温を画像化する検査法で、冷感が血行障害からくるのか神経障害からくるのかを区別できます。

サーモグラフィーで皮膚温が低下している場合、もしくは明らかに冷たい場合は、足首と上腕の血圧を調べるABI検査や、指先の血管の血液量を調べる指尖(しせん)容積脈波検査などで、血行障害を簡易に診断します。血行障害を来す代表的な疾患として、閉塞(へいそく)性動脈硬化症、バージャー病、レイノー症候群があります。

閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化によって主に下肢の血行障害を来し、冷感、しびれ感が出現します。進行すると間欠性跛行(はこう)といって、歩行時に下肢が痛くなり休み休みでないと歩けなくなります。糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満などの生活習慣病のある方に多くみられます。

20~40代の男性に多いバージャー病は、発症や悪化に受動喫煙も含めて喫煙が強く関与します。

レイノー症候群は、発作的に細小動脈が収縮して、指先が青白くなったり、冷感や痛みを来す病気で、冷水に触れたり精神的ストレスが原因になります。膠原(こうげん)病の一症状として現れる場合があります。

 

動脈性の血行障害がないのに皮膚温が低下している場合は、貧血や低血圧、甲状腺機能低下症、心不全の可能性も考えられます。血液検査や心臓超音波検査などで診断します。

疾患を伴わない、いわゆる「冷え性」は女性ホルモンや自律神経に影響を及ぼす睡眠不足、運動不足、栄養バランス、ストレス、更年期が主な原因になります。熱を効率的に生み出すのは筋肉なので、筋肉量の少ない女性は男性よりも冷え性になりやすいです。

次に神経障害で代表的な病気が腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症です。腰の神経が圧迫されると下肢の痛みや冷感、しびれ感が出現します。これは腰に自覚症状がなくても起こり得ます。立った状態や腰を後ろに反らしたときに痛み、しびれが強くなる場合は整形外科の受診をお勧めします。

腰に異常がなければ、末梢神経そのものの異常も考えられ、神経内科での精査が必要になります。

このように冷感を来す疾患は多岐にわたります。受診する科は冷感が主体であれば、まずは内科や循環器科、しびれや痛みなど神経痛が強い場合は整形外科や神経内科を受診していただくとよいでしょう。複数科の受診が必要になることもありますので総合病院の受診をお勧めします。