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<アトピー性皮膚炎の新しい検査>

アトピー性皮膚炎では必要に応じて血液検査を行います。その際、TARC(thymus and activation-regulated chmokine:タルク)と呼ばれる血液検査をすることがあります。今回はそのTARC(タルク)について解説します。

TARCがどういう血液検査かというと、これは炎症を引き起こすリンパ球がどの程度働いているかがわかるもので、目に見えない炎症のレベルを数値によって把握できるようになったという画期的なものです。

これにより、TARCの検査の結果に応じて処方するステロイド剤の強弱を変えたり、薬物治療の効果がでているか否か、薬を止めても大丈夫か否かという判断が客観的な数値という基準で測れるようになりました。

これまでアトピー治療で頻発していた問題としては、見た目には肌がきれいになっても投薬を止めた途端に再発するということがありました。再発するたびに医師も患者も悩んでいました。

それが肌の見た目ではなく、TARC値を指標にしてみると再発するケースというのは見た目はきれいになっていてもTARC値は高いままというケースが多かったのです。そこでTARC値が目標値に下がるまで治療を続けたところ、再発確率を大幅に下げることができました。

薬を塗ればアトピーの症状は落ち着くけれど止めればすぐ悪くなるとか、医者に行っても適当に薬を出されるだけで効果があるのか全然わからないという不満を持っている方もいると思いますが、TARC検査を行うことでそうした不満が一気に解消する可能性があります。

2008年からは、TARC検査も保険適用になって利用しやすくなったこともあり、医師にとっても患者さんにとっても今、アトピー治療において最も信頼できる指標になっているといえます。

健常者の場合、TARC値は450pg/mL未満になります。成人型アトピー性皮膚炎の患者はTARC値500pg/mL以下を目標に治療を行うのが普通です。TARC値500pg/mL以下というのは「症状が全くない寛解した状態」です。

その他、TARC値とアトピーの重症度の関係を見ていくと以下のとおりです。

● 450pg/mL以下・・・正常値
● 700pg/mL未満・・・軽症
● 700pg/mL以上・・・中等症以上

重症となると1万以上というケースもあるようです。このTARC値に基づいて治療方針を決めたり治療効果をチェックしてもらうと安心できると思います。


なお、アトピー性皮膚炎における血液検査は、他にもIgEの濃度を調べることによって、ダニ、ほこり、花粉などアレルギー反応を引き起こすアレルゲンの目星をつける目的で行うものなどがあります。