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<アトピー性皮膚炎の治療方針>

今回はアトピー性皮膚炎の治療について、最近の考え方を書きます。

アトピー性皮膚炎の治療の基本は1)原因・悪化因子の検索と対策、2)皮膚機能異常の補正(スキンケア)、3)薬物療法の3本柱です。

まず、原因・悪化因子ですが、多くの方に皮膚バリア機能異常がみられますので、積極的にバリアの修復、維持をすることが重要です。また、悪化因子として黄色ブドウ球菌の感染、掻くという行為があげられますので、感染対策、痒みを抑える対策が必要です。乳児では食物アレルギーの関与が認められることがあるので、一緒に治療することが重要です。

アトピー性皮膚炎の皮膚は1)水分保持機能の低下、2)痒み閾値の低下、3)易感染性などの機能異常が有り、バリア機能低下をきたしていますので、皮膚の清潔保湿が重要です。乳幼児期から積極的な保湿を用いることでその後のアトピー性皮膚炎の発症を抑止すると言われていますので、積極的なスキンケアは大変重要です。汗をかいた後などはなるべく早く洗い流すようにしましょう。

上記でも皮膚炎が改善しない場合には薬物療法が必要になります。炎症に対する薬物療法の中心はステロイド外用薬になります。

今まで「ステロイド悪者説」により、症状がある時だけ強いステロイド外用薬を短期間使用し、やめる。やめて暫くするとまた増悪し再び強いステロイド外用薬を短期間使用するという、リアクティブ療法を中心に指導する医師がほとんどでした。これは、結果的に強いステロイド外用薬を長い年月使用し続けることに繋がっています。

当院では「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2015」に基づき、寛解導入から維持療法に移行し、プロアクティブ療法と呼ばれる方法をすすめています。プロアクティブ療法とは寛解維持期にも予防的に皮膚炎のあった部分には定期的に弱いステロイド外用薬を使用する治療法です。体質による疾患であるアトピー性皮膚炎は完全になおってしまうという事は難しく、上手くコントロールしていく事が大切です。

当院では初診時に診断、重症度の判定をおこない、治療方針をお話しし、使用するステロイド塗布剤の強さ、種類、軟膏の塗る量、塗り方、塗る期間、減量の目安、スキンケアのやり方などを指導しています。多くの患者さんは4週間程度で正常な皮膚となり、その後2カ月程度で維持療法まで移行でき、この時点では1~4週に1回の弱いⅣ群ステロイド外用薬に加えて、毎日の保湿剤、スキンケアで、正常な皮膚を維持できるようになっています。大体3カ月くらいすると患者さんはご自分でコントロールできるようになり強いステロイド外用薬を使用することが無くなります。

当院ではステロイド外用薬と保湿剤の混合剤は使用しません。混合してしまうと、ステロイド外用薬の変更、休薬が出来なくなり、また、ステロイド自体の塗布量がわからなくなってしまうからです。

また、寛解維持療法の段階ではタクロリムス軟膏という免疫抑制剤でコントロールしていく方法をとることもあります。

炎症の強いときには怖がらずにステロイド外用薬を使用し、最終的にはステロイド外用薬はほとんど使用しなくてもいい綺麗な皮膚を実現できるよう頑張りましょう。

九州大学皮膚科学教室のホームページにアトピー性皮膚炎について大変参考になる情報が掲載されていますので、参考にしてください。(http://www.kyudai-derm.org/part/atopy/ )