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<マイコプラズマ感染症>

毎年せきが続く患者さんの中にはマイコプラズマの感染が疑われる方がいらっしゃいます。また、近年簡単な迅速検査キットが使えるようになり、安易にマイコプラズマ感染だと診断されている例も見られます。

マイコプラズマはマイコプラズマ・ニューモニアエ(Mycoplasma pneumoniae)という、細菌とウィルスの中間の大きさと性質を持った病原体です。一般的なペニシリン系やセフェム系の抗生剤が効かず、マクロライド系やテトラサイクリン系の抗生剤が有効です。上気道炎に何でもかんでもセフェム系の抗生剤を出す医師がいます。セフェム系の抗生剤は気道への移行も悪く、耐性菌も多いので、呼吸器感染症を少し勉強している先生は出すことはありません。ただし、小児の場合は他に使用できる抗生剤が無い場合はやむを得ず出す事が有ります。

 マイコプラズマに感染した時の潜伏期間は2~3週間程度と言われており、マイコプラズマ感染症の人と接触してもすぐに症状が出るわけではありません。ですから、同級生がマイコプラズマと言われたからと言ってすぐに感染、発症するようなものではありません。

症状としては、発熱後1~2日経ってから咳が出てきて、だんだん強まっていくというのが典型的です。はじめのうちは痰が絡みません。

マイコプラズマは成人までに97%が感染していると言われています。感冒様症状のみで自然に治癒することも有ります。小児や若い人の肺炎の原因として多く、しつこい咳などの自覚症状がある場合には胸部レ線で確認する必要が有ります。

 マイコプラズマ感染症の確定診断は

   ①培養によるマイコプラズマ病原体の分離

   ②血液中の抗体価の上昇

   ③遺伝子検査

でおこなわれます。①の病原体の培養は最低でも一週間程度かかります。また、③の遺伝子検査は特殊な機器が必要で、一般の施設ではおこなえません。

②の血液中の抗体価の検査は比較的簡単ですが、成人の多くがマイコプラズマに感染した既往があることや、血清抗体価が長い間陽性になっていることがわかっていますので、一回の検査が陽性でもマイコプラズマによる感染とは確定できません(医療従事者も含めて、多くの方々が間違った解釈をされています)。確定診断するためにはペア血清(2週間以上の間隔で2回採血が必要)をとり4倍以上の上昇を確認するか、一回の検査でも異常に高い血清抗体価を証明する必要があります。

急性期のマイコプラズマ感染症の診断のための迅速検査が開発され、喉のぬぐい液を用いて20分程度でマイコプラズマを検出できるキットが使用できるようになりました。しかし、この検査は感度(本当にマイコプラズマ感染の患者さんで陽性にでる確率)が60%程度と低く、しかも、疑陽性(保菌者や、感染症状が無いのに陽性になる)となることが高いキットもあるため、注意が必要です。以上から、検査に頼りすぎると診断を間違える可能性があります。

マイコプラズマの診断は、いつの時代も流行状況、患者さんの背景、臨床症状に加え血液検査やレントゲンなどの結果を総合的に判断する必要があります。