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<漢方薬は難しい>

最近漢方薬を処方される医師、医療機関が増えているように感じます。

私が信州大学医学部の学生だった頃は東洋医学、漢方医療についての講座は無く、もちろん講義もありませんでした。当時は全国的にも東洋医学の講義があったのは富山医科薬科大学くらいで、それ以外の医学部には無かったと思います。漢方薬を処方されている医師の皆さんは卒業後ご自身でお勉強されているのでしょうね。

東洋医学、漢方医療はたいへん奥が深く、私は不勉強で、漢方薬を責任をもって投薬できないので、基本的には当院では漢方薬を処方しません。これから書くことは漢方薬のことをよく知らない医師が勝手に思っていることですので、戯言として読んでください。

日本における漢方薬はいわゆる約束処方です。例えば、「吐き気のある方にはツムラの〇番が効果がありますよ」、といった感じです。この「ツムラの〇番」という漢方薬には種々の生薬がある一定の比率で入っていて、それを1回〇グラム飲むと効果が出ます、ということになっています。

私が信州大学の呼吸器内科に勤務していた時に中国からの留学生(中国では東洋医学の医師として診療していた方)に「日本の漢方薬処方は本国とは全く違い、別物だ」言われたことが有ります。東洋医学では患者さんの体質や性質(確か「」と言っていました)と病気の症状からその患者さんに合った生薬の組み合わせと比率を決めて配合し、投薬するそうです。日本のような約束処方で多数の患者さんを治療することはないそうです。それを聞いた時に、「私はそこまで患者さんを診察できないな」と感じ、東洋医学、漢方薬は難しいと思った記憶があります。

日本の漢方薬はある証、病状に効くように生薬が配合されています。例えば風邪(急性上気道炎)の時によく処方される葛根湯は、カッコン4.0、ケイヒ2.0、タイソウ3.0、シャクヤク2.0、マオウ3.0、ショウキョウ2.0、カンゾウ2.0の割合で配合されています。中間~実の証の熱性疾患の患者さんがこれを1回2.5g、1日3回飲むと効果が出ると言われます。咳止めとして処方されることが多い麦門冬湯という漢方薬にはバクモンドウ10.0、カンゾウ2.0、ハンゲ5.0、ニンジン2.0、タイソウ3.0、コウベイ5.0の割合で配合され、これを1回3g、1日3回飲むと効果があるとされています。もしこの2種類を同時に処方されたらどうなるのでしょう。どちらにもタイソウ、カンゾウという生薬が含まれていますので、その成分だけが過剰に多くなってしまうことになり比率が変わってしまいますので、本来の効果が期待できるのかわかりません。まったく別の薬になってしまう可能性もあります。また、特にこのカンゾウという生薬は浮腫、高血圧、低カリウム血症などの副作用をきたすことで有名で、過剰摂取は要注意です。

漢方薬には副作用はないと思われている方が多いと思いますが、様々な報告がありますので、飲み始めてから変わったことが有った場合には処方された医師、薬剤師さんに確認することが必要です。

漢方医療は大変難しいと思います。特に、日本の漢方医療は特殊です。

医療者側も勉強が必要です。私には難しくて、わからないことだらけです。