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<インフルエンザの話題>

年が明けて平成31年が始まりました。

今年の松本は朝晩の冷え込みが強い日があるかと思えば、日中暖かい日が有り、寒暖差が激しくなっています。

お正月休み明けからインフルエンザに感染した方が多数受診されるようになりました。今のところ成人が多く、昨年と違い全ての患者さんがA型インフルエンザです。

インフルエンザはインフルエンザウィルスの感染によっておこる急性熱性疾患で、

1.インフルエンザもしくは発熱している人が周囲にいた

2.急に熱が出た

3.全身の症状(寒気、だるさ、関節痛、筋肉痛など)がある

4.頭痛がある

5.熱があるのに食欲がある(下痢や吐き気などの消化器症状は少ない)

6.咳はあまり出ない

7.黄色い痰はあまり出ない

8.鼻水・鼻づまりはないか少ない

などの特徴があります。いつもの風邪とは違うなと感じた場合には早めの受診をお勧めします。

今シーズンインフルエンザの治療薬の選択肢が増えました。従来からある内服薬のオセルタミビル(商品名タミフル)、吸入薬のザナミビル(商品名リレンザ)、ラニナミビル(商品名イナビル)、点滴のペラミビル(商品名ラピアクタ)といったノイラミニダーゼ阻害薬と言われる種類に加え、昨年3月には従来の作用機序と異なったバロキサビル(商品名ゾフルーザ)という薬が発売になりました。

新薬として発売されたゾフルーザはメディアでも大分取り上げられ、夢のような薬といったイメージで、多くの臨床医が使い始めているようです。一方全国の大きな病院(感染症の専門の病院も含めて)では採用を見合わせる動きも出ています。

その中の一つ千葉県の亀田総合病院でも採用を見合わせました。ゾフルーザは1回の服用で完結し、ウィルスの排泄が従来の薬剤よりも早く減少することが利点とされていますが、それによって感染性が落ちるとの報告はなく、飛沫予防策の期間は変わりません。また、治療中に10-20%程度の耐性化がみられたとの報告が有ります。薬価もタミフルに比べて1.76倍と高価です。将来的にタミフル耐性ウィルスに対する治療薬となる可能性もあり、今から使用して耐性ウィルスを増やしてしまっていいのかという問題もあり、採用を見合わせたそうです。

従来の吸入薬は2種類あります。1日2回を5日間吸入するリレンザと、1回のみ吸入するイナビルです。抗インフルエンザ薬の解熱効果についてはタミフルとの比較のみがおこなわれていて、他剤との比較した報告はあまりありません。以前小児感染症学会でリレンザとイナビルの比較をした報告が有ります。結果としては、吸入から解熱までに要する時間に差はありませんでした。一度解熱した後に半日から1日後に再度発熱(再発熱)する患者さんが、リレンザよりもイナビルの方が高率でした。現在イナビルはアメリカで発売されておりません。開発当初アメリカでも発売を目指していたようですが、この時の試験でプラセボ(実薬が入ってないもの)に比べて有用性が確認できなかったとの報告がされ、開発を断念した経緯があり、海外での発売が白紙になっています。

以上から当院ではタミフルとリレンザを中心に投薬させていただいております。発症早期や、吸入が可能な方にはリレンザを、吸入が困難な方や時間が経っている方にはタミフルを処方させていただくようにしています。

いずれにしてもインフルエンザウィルスが増え切らないうちに加療を始める必要がありますので、疑わしい時にはなるべく早く受診されることをお勧めします。