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<新型タバコ>

最近タバコをやめられない人、あるいはやめる意思のない人にとっては健康被害の低減につながるとして電子タバコ(非燃焼・加熱式タバコ)を推奨する考え方があります。昨年10月31日に日本呼吸器学会から「非燃焼・加熱式タバコや電子タバコに対する見解」が公表されましたので、少しまとめて記載したいと思います。

日本呼吸器学会では

1.非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用は、健康に悪影響がもたらされる可能性がある

2.非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用者が呼出したエアロゾルは周囲に拡散するため、受動吸引による健康被害が生じる可能性がある。従来の燃焼式タバコと同様にすべての飲食店やバーを含む公共の場所、公共交通機関での使用は認められない。

としています。

非燃焼・加熱式タバコや電子タバコは、葉タバコを加熱することにより、ニコチン含有エアロゾルを発生させて吸引するタイプ(非燃焼・加熱式タバコ)、液体を加熱してエアロゾルを発生させて吸引するタイプ(電子タバコ)とがあります。どちらのタイプでも従来型の燃焼式タバコと同様に依存性薬物であるニコチンが含まれています。これらの新型タバコは、「煙が出ない、あるいは煙が見えにくいので、禁煙エリアでも吸える」、「受動喫煙の危険が無い」、「従来の燃焼式タバコより健康リスクが少ない」と誤認されています。

新型タバコは従来のタバコをやめられない人、あるいはやめる意志のない人にとっては健康被害の低減につながるとして、従来の燃焼式タバコ使用者は代替品として電子タバコを使用することを推奨する考え方があります。しかし、これらの新型タバコの使用と病気や死亡リスクとの関連性についての科学的証拠が得られるまでには、かなりの時間が必要です。現時点では明らかではなく、推測にすぎません

新型タバコの主流煙の中には従来のタバコとほぼ同レベルのニコチン揮発性化合物アクロレインホルムアルデヒド、約3倍のアセナフテン(多芳香環炭化水素物)などの有害物質が含まれていることが報告されています。

ニコチン入り電子タバコ使用者から検出されるニコチン代謝物は、従来のタバコ使用者とほぼ同等量、タバコ特異的ニトロソアミンの尿中代謝物、揮発性有害物質の代謝物は少ないとの報告があります。どちらにしても有害物質が体内から検出されていることに変わりありません。

新型タバコは周囲の人々への受動喫煙の危険が指摘されています。「煙が出ない、あるいは見えにくい」とされていますが、特殊なレーザー光を使用者の呼気に照射すると大量のエアロゾルを呼出していることがわかります。従来のタバコ使用者の呼出する煙と違い、大量の“見えにくいエアロゾル”を呼出しています。世界保健機構(WHO)がレビューした複数の研究で1)電子タバコ使用者の呼出炎中のニッケルやクロムなどの重金属濃度は燃焼式タバコより高い、2)PM2.5ニコチンアセトアルデヒドフォルムアルデヒドなどの濃度は燃焼式タバコの呼気炎中より低いが、大気濃度より数十倍から100倍程度高い、とされています。新型タバコの受動喫煙による健康リスクについて科学的証拠を得るには今後時間がかかります。“見えにくいエアロゾル”の中には通常の大気中濃度を上回る有害物質があるわけですから、「受動喫煙者の健康を脅かす可能性があると考えることが合理的である」とWHOは述べています。

新型タバコは依存性物質であるニコチンやその他の有害物質を吸引する製品ですので、日本呼吸器学会では喫煙者にとっても、受動喫煙をさせられる人にとっても推奨できないと結論付けています。

今後様々な研究報告が出てくると思いますが、呼吸器、循環器疾患にはいい影響を与えないと思われますので、やめることが賢明だと思います。