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<抗微生物薬適正使用の手引き>

先月厚生労働省から抗微生物薬適正使用の手引きという文書が出されました。

抗微生物薬(一般には抗生物質といった方がわかりやすいでしょうか)の不適正な使用に伴う有害事象として、薬剤耐性菌とそれに伴う感染症の増加が国際的な課題となっています。厚生労働省から、この課題を克服するために抗微生物薬の適正な使用を推進していく目的でこのような手引書が出されました。先日NHKのニュースでも取り上げられていましたし、各医療機関にも通知されていますが、お読みになった医療従事者はどのくらいいるのでしょうか。

手引書には外来診療において抗微生物薬の適応になる病態についてわかりやすく解説されています。その中から少しご紹介させていただきます。

2015年12月15日付けのひとりごとでも触れましたが、基本的に急性上気道炎(いわゆる風邪)の時には抗微生物薬の投与は必要ありません。一度快方に向かったものが、再度悪化するような二峰性の悪化が見られた場合など、細菌感染の合併を疑わなくてはいけない時に抗微生物薬の投与を考慮することが重要です。

また、下痢をしたときにもよく抗生物質が処方されると思います。この手引きでは急性下痢症について取り上げられています。急性下痢症では多くの場合ウィルス性の感染症で、2~3日間で軽快します。水分摂取を励行し、脱水を予防することが重要です。重度の脱水や乳幼児、高齢者なども含めて、補液ではなく可能な限り経口での水分摂取をおこなうことを推奨しています。特に成人では多くの場合果物ジュースやスポーツドリンクなどの摂取で充分とされています。腹痛が強い場合や高熱(38度以上)、血便、粘血便などの症状が伴うときには細菌感染も疑います。このような患者さんで中等症以上の症状がある場合には抗微生物薬の投与を検討することとされています。逆に、抗微生物薬投与によって、クロストリジウム・ディフィシル腸炎を発症し、重症化することもありますので、注意が必要です。

風邪を引いた、熱が出た、下痢をしたなどに対して、何でもかんでも抗生物質を投与することは、最終的には薬が効かない新たな病気を誘発しかねません。必要な時に必要な薬だけを処方させていただくよう、これからも努力してきたいと思います。